愛人からの浮気調査依頼・その6(完)

日比谷 探偵の記憶

第八日目

愛人からの浮気調査依頼・その5
第6日目昨夜終了時点でご依頼者に簡単に報告すると彼女の身元調査もしたいという。これは第2日目に彼女のフルネームが確認された時点でご依頼者に進言していた調査であるが、本日もこれまで通り彼氏の浮気調査は継続である。非常にありがたいことだが、正式

第8日目の金曜日、朝6時30分には昨日判明した愛人4号らしき女性の一軒家の前に集合、張り込みを始める。間違いなく家族で居住しているだろう家で車庫には国産のセダンが1台止まっている。

7時半に女性の父親らしき中年の男性がスーツ姿で出勤する。その10分後に母親らしき女性が近くにゴミ出しに出て家に戻る。

その後、12時を回っても誰も出てこない。

13時過ぎに多分、弟なのだろう。20歳前後のカジュアルな格好をした若い男性が自転車で出て行く。

探偵トトロ

もしかして開始時間が遅かったか…

既に出勤か外出してしまったのかと疑心暗鬼になる。

すると16時過ぎに対象者である愛人4号がやっと出てきた。カジュアルなパンツ姿にショルダーバック、紙袋を持っている。

近くのバス停からバスに乗り、地下鉄東西線の浦安駅に行く。彼氏とどこかで待ち合わせかと思いつつ、尾行していく。

浦安駅から東西線に乗り、茅場町駅で日比谷線に乗り換え、銀座を通り過ぎ、六本木駅でおり、六本木ヒルズ方面改札で1人の女性と合流する。17時半過ぎにヒルズ内の一軒のカフェに2人で入る。

しばらくして店内を覗くと同年代の女性2名と男性1名が合流、5人で飲食しながら談笑している。男性1名は合流した女性1名とカップルの模様でいずれも友人といった雰囲気である。

21時過ぎになって5人は出てきた。そしてカップルの男女が対象者ら女性3人と別れる。その際、「お土産、ありがとうね。また」などと対象女性に言って別れている。

そうか、海外旅行のお土産を友人らに渡しに来たのだ。2人の女性も貰っているらしく、小さな紙袋を下げている。この愛人4号さんはいつ海外旅行から帰国したのだろう。などと思いながら対象女性3人を尾行する。

六本木駅に入り、1人の女性は別ホームに向かい別れる。そして1人の女性と共に銀座方面の地下鉄に乗った。すると日比谷駅でその女性とも別れ、来た道を引き返すように茅場町駅で東西線に乗り換え、10時半過ぎには帰宅した。

何のことはない。旅行から帰って間もないのか勤めにも出ず、友人らにお土産を渡しただけの1日であった。この事を依頼者の愛人2号さんに報告。

何か情報でも持っているのか、明日、明後日は調査はしないで月曜日にまた今日と同じように4号さんを対象に調査してほしいとの事であった。

探偵トトロ

こうなると「女の意地」なのかもしれない…

第九日目

月曜日、朝7時に愛人4号の家の前に到着、張り込みを始める。

7時30分に父親らしき男性が出勤、それから10分もしないで愛人4号が出てきた。最寄りのバス停に向かい、バスに乗車する。けっこうな混み具合である。

終点の浦安駅前で降車しそのまま浦安駅に大勢のバスの乗客と共に吸い込まれていく。

東西線に乗車して日本橋から日比谷線に乗り換え、日比谷駅にて下車、少し歩いてオフィスビルに入り、8階にある外資系の不動産会社に入ったのである。

不動産会社から彼氏の職業と共通があるがこのような女性と知り合う事が想像できない。そのまま張り込みを続ける。愛人3号の事もある。いつ彼氏と接触するか分からない。

しかし、いっこうに出てこない。やっと12時5分過ぎに同僚らしき女性3人と1階に降りてきた。そして近くのお弁当屋さんで弁当を購入して3人とも勤務先に戻ったのである。

夕方まで出てこないのかもしれないが張り込みを続ける。これが探偵にとっては辛い時間である。今日は晴れているからまだ良いのだが雨が降られると傘を差しながら近くで張り込まなければならない。すぐに傘を差されると顔を認識するのが難しくなるからでリスクも伴う。

17時40分に女性1人と共に出てきた。一緒に日比谷駅に入り、日比谷線に乗車、愛人4号のみ茅場町駅で下車し東西線ホームへ向かう。

何のことはない。浦安駅で下車、バスに乗りまっすぐ帰宅してしまったのである。

依頼者である愛人2号に報告すると彼氏はご依頼者の所に来るらしい。
そして愛人4号の家と勤務先が判明したので一旦調査を本日で打ち切ってほしいとの事であった。

愛人さん、いわゆる2号さんからの浮気調査依頼で愛人3号、4号と確認。
しばらくして別に依頼されていた3号さんの身元調査もあがり、実家や経歴も判明した。

浮気調査と身元調査の結果を報告書にして2号さんに届ける。

悲しい顔をして報告書を読んでいる。

本妻であれば慰謝料をたっぷり取れるところであるが、2号さんという立場からそうはいかない。

虚しさだけが残っているのか。

少し間が開いてからやっと口にした。

依頼者

相手が判って良かったです。でも、しばらくはこのまま放っておきます。

探偵トトロ

そうですか。
依頼者

彼が私に対して別れを言いださない限り私はこのままずっと彼を待っています…
探偵トトロ

はい。

生活のこともあるのだろうが、やはり彼の事を愛しているのであろう。

依頼者

もし、彼が私と別れると口にしたら…奥様に…。
探偵トトロ

ご依頼者は今後の人生をどのように生きて行くのだろう…

と余計な事を考えながら調査料金を頂き、帰路についた。

投稿者プロフィール

totoro
totoro
探偵歴30年を超えるベテラン探偵。現在は主に依頼者の相談を担当。

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