姉妹の家出調査・その1

岡山駅 探偵の記憶

相談の電話

今から15年以上も前の調査ではあるが、調査結果を報告してあんなに喜ばれ、涙を流して感謝されたケースは余り記憶にない。

ある昼下がりに問い合わせの電話が入った。岡山県津山市内に住む50歳代の女性からで娘が家出をしたので探して欲しいという。

家出調査(家出人調査)については着手金プラス成功報酬との料金体系を説明するが、持っている情報量によっても全てが異なると説明する。

なぜ東京の探偵事務所に電話をくれたのですか?と尋ねると、娘は既に上京していた姉を頼って家出したのではないか、と考えているらしい。

その姉も東京の就職先を退職し現在、音信が取れず、所在不明だという。困った姉妹である。

母親に上京されますかと尋ねると、東京には行けない、実は父親である夫には内緒の依頼なのだそうだ。

父親は「今まで育てた恩も忘れ、勝手に家出したのだから放っておけ。何かあれば警察から連絡が来る」といい、探偵に依頼する事にも反対しているらしい。

でも母親にしてみれば放ってはおけない。

「自宅に来てくれないか、たとえ相談で終わっても往復の交通費は支払います」と先に言われ、明後日以降の昼間であればいつでも良いとの事だったので住所と電話番号を控え、明後日の昼前後には行けると伝え、電話を切った。

岡山へ向かう

明後日、朝一番の新幹線に乗った。

何しろ岡山県津山市である。片道約6時間はかかる。

岡山駅で新幹線を降り、津山線に乗り換える。昼前には津山駅に着き、依頼者宅に電話を掛ける。駅からそんなに遠くないのでタクシーで来てくれと言われる。それでも約1500円はかかった。

住宅街の中にある庭付きの日本家屋である。インターフォンで話をするとすぐに出てきて中に招き入れてくれた。

「遠いところ、本当にありがとうございます」と礼を言われ、客間に通される。さっそく姉妹の家出について話を聞く。

姉は地元の県立高校を卒業した後、兵庫県の短大へと進学、卒業し東京の会社に就職したのだが2年も経たないで自己都合で退職する。

退職理由については後で発覚した事であるが、どうやら妻子ある同僚男性と交際、それが相手の妻から会社に発覚、居づらくなって退職したらしい。その不倫事情も父親の知るところとなり、父親の剣幕もすさまじく、連絡も取れなくなったという。

妹は姉より4歳年下で今年3月に姉と同じ県立高校を卒業したのだが大学受験に失敗、浪人中ではあったが姉の事で父親に反抗する事も多くなり、家出した。お姉ちゃん子だったので隠れて姉と連絡は取り合っていた様で、多分、姉の所へ転がり込んだか、姉を頼って東京に行ったのは間違いないという。

姉が東京にいるとの保証は無いのでは?と問いただすと、妹の高校時代の友人が東京にいる姉の所へ行くと家出したことを知っており、その友人の母親が依頼者である母親に教えてくれたので間違いない、とのこと。

しかし、姉が上京後に借りていたアパートの荷物はきれいになくなっており、住民票もそのまま放置されているらしい。

ある程度の家出の経緯は掌握できた。今度はこちらから料金の説明をする。

調査期間は1ヶ月間と設定、着手金は60万円、これは情報料や交通費などの経費分としてである。1日2万円にしかならない計算である。

最近、情報提供者のお礼金も馬鹿にならない時がある。成功報酬については姉妹どちらかでも現在の居住先が判明すれば100万円と見積もった。

母親は考える事もなく、その金額でお願いしますというので契約書を交わす。署名、捺印してもらい、更に妹については未成年でもあるので捜索委任状も提出してもらい、姉妹について顔写真の他、様々な情報提供をしてもらう。

母親に姉妹の小、中、高校、姉については短大を含め卒業名簿などの提出も求めた。しかし、学校時代の友人、まして地元の友人には接触しないで欲しいという。

地元の妹の友人数人には母親がその母親の協力得て情報を聞いてもらったりしており、また、家出の事は内緒にしてもらっているからだ。

居所を知っていても正直に言わないだろうし、探偵に頼んだ事も姉妹に悟られると逃げられてしまう。

多少、厳しい条件ではあるが了解する。多分、実家に戻ってきてからの事や将来の事も考えているのだろう。

ただ、東京では姉の元勤務先関係者などへの聞き込みについては制限をつけないとの事であった。依頼を受け、その日に帰京する。

姉妹の家出調査・その2
内偵東京に戻った翌日、依頼者である母親から預かった資料を基に内偵準備に取りかかる。まず姉が以前住んでいたアパートの聞き込みから始める。少し離れた所に住んでいる大家は母親からの委任状を見て、かなり協力的になってくれた。何しろ当時の保証人である

投稿者プロフィール

totoro
totoro
探偵歴30年を超えるベテラン探偵。現在は主に依頼者の相談を担当。

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