夫婦喧嘩
残された依頼者とご主人、騒ぎを聞きつけた野次馬も増えている。
ご主人と依頼者を落ち着くようになだめながら、その場から移動した。
警察でも来たら面倒な事になりかねない。
どうしてこうなるんだ…
懸念していた通りの結果になってしまった。
ご主人はあきらめたのか、黙って歩いている。
依頼者は泣きじゃくりながら先を歩くご主人に
「別れてやる!」
「親戚や仲人にもばらしてやる!」
「女を呼べ!」
と罵声を浴びせかけ続けている。
このままでは埒があかない。
奥様が興奮しているので先に家まで送りますよ
お願いします。
ご面倒をおかけします。
ご主人は冷静さを取り戻し、恨んでいるであろう私に奥様を委ねた。
奥様、家まで送りますから先に帰りましょう
いや--っ!
と叫び、ご主人の腰に抱きつく。
そして「一緒にいる」と泣きじゃくりながら駄々をこね始めた。
なんだかんだと言っても奥様はご主人の事を本当に愛しているのだ。
しかし、最悪だ…
今度はこちらがイライラしてくる。
犬も食わない夫婦げんかに巻き込まれている。
かまっていても埒があかない。
私たちがいると奥様は甘えるだろうし、ご主人も辛いだろう。
夫婦でじっくり話してもらわなければ。
私たちはここで引き上げます。ここはお二人でじっくり話して下さい。
奥様も冷静になって、もうお互いに暴力はふるわない事。
約束して下さい。
と伝えて、その場から立ち去る事にした。
依頼者は小さな声で「はい」と返事する。
ご主人は黙っていたが、なにか目で訴えていたように感じた。
二人きりにはしないでくれ…
と。
結末
後日に依頼者から電話が入り、来社された。
「先日は大変ご迷惑と醜態をさらしまして大変申し訳ありませんでした。本当に恥ずかしく思っております。」と頭を下げる。
いつもの上品な奥様に戻っている。
あの後、ご主人と一緒に帰宅してずっと話をしたそうで「浮気相手の女性とは別れる。もう浮気はしない」と約束してくれたとの事でニコニコと話をする。
そうですか、良かったですね
と相づちを打つが、私は半分、信用していなかった。
ご主人は相手女性について名前も住所も勤務先も勘弁してくれと教えてくれず、翌日に奥様の前で浮気相手に電話して「キミにもすまなかった。もう会わない」という内容の会話をしたという。
「わかりました。女性の身元調査はあきらめましょう」と伝えた。
そしてあのホテルでの大乱闘について
もし浮気相手が怪我でもしたら奥様が傷害罪で逮捕されてしまいますよ。怪我による慰謝料も発生しますし大変だったのですよ。
だから隠れて見ていて下さいと約束していたのに。
それとあの後、女性の身元も判明できたのですよ
「反省しております」と言って、奥様は3日分の調査料金を支払って帰っていった。
しかし、その半年後に奥様が見えて再度浮気調査する事となり、調査の結果、その浮気相手と関係が継続していた事が判明。
もちろん身元も特定できたのだが、それについてはいずれまた。
投稿者プロフィール
- 探偵歴30年を超えるベテラン探偵。現在は主に依頼者の相談を担当。
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